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2024年度診療報酬改定のポイント解説/医療DX、既存加算の適正化

2024年度診療報酬改定のポイント解説/医療DX、既存加算の適正化

診療・介護・障害福祉サービスの各報酬にかかる、個別の改定ポイントを解説。今回は、訪問看護における医療DXにかかる新加算や機能強化型訪問看護ステーションの評価アップ、多様なニーズへの対応、既存加算における各種評価の適正化などを取り上げます。

医療DXへの対応

「訪問看護医療DX情報活用加算」が新設

居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムを通じて利用者の診療情報を取得し、その活用によって質の高い訪問看護を提供した場合について、「訪問看護医療DX情報活用加算」が新たに設けられました。月1回に限り50円(5点)が加算されます。

「居宅同意取得型」とは、利用者の自宅でオンラインの資格確認(マイナンバーカードによる本人確認にもとづく資格情報の取得)や薬剤情報の提供に関する同意を、デジタル端末で得ることをいいます。

施設基準は以下の通りです。

施設基準
1. 電子情報処理組織の使用による請求(オンライン請求)を行っていること
2. 電子資格確認を行う体制を有していること
3. 事業所の見やすい場所に、以下の事項を掲示していること
 ● 医療DX推進の体制に関する事項
 ● 上記体制により,質の高い訪問看護を実施するための十分な 情報を取得していること
 ● 上記の情報を活用して訪問看護を行っていること
4. 3の事項について、原則としてウェブサイトに掲載していること

なお、4の基準は2025年5月末までの経過措置が設けられています。

オンライン請求に伴う指示書様式の見直し

医療DXに関しては、2024年6月から訪問看護レセプトのオンライン請求が始まります。これを踏まえ、訪問看護指示書(精神科訪問看護指示書含む)の記載事項や様式が見直され、「主たる傷病名」にそれぞれ「傷病名コード」を付すことが原則となりました。

医師の死亡診断に関しICTを使った補助も評価

業務のデジタル化という点では、在宅ターミナルケア加算においてICTを活用した新加算「遠隔死亡診断補助加算(1回150点)」が加わりました。在宅での利用者の看取りに際し、医師が行う死亡診断を、訪問看護師がICTを活用して遠隔で補助した場合の評価です。利用者が離島などに在住し、死亡時に医師の訪問が難しいケースを想定したものです。

対象は、在宅ターミナルケア加算を算定している利用者。その利用者に対し、ICTを用いた在宅での看取りに係る研修を受けた看護師が、医師の指示のもとで死亡診断の補助を行うことが要件です。

機能強化型訪問看護ステーションの評価手厚く

今改定では利用者ニーズへの即応性に関する見直しも行われています。

1つめは、機能強化型訪問看護ステーション(以下、機能強化型)に関する評価です。機能強化型は、24時間の対応体制や手厚いターミナルケアの実績など、重度化する在宅のニーズに応える体制を整えているのが特徴です。今改定では、この機能強化型の訪問看護管理療養費が1~3の各区分ですべて引き上げられました。

機能強化型訪問看護管理療養費(月の初日の訪問の場合)

機能強化型訪問看護管理療養費(月の初日の訪問の場合)

区分1では、「専門研修を受けた看護師の配置」が「望ましい(推奨)」から「必須」に格上げされています。

なお、2024年3月末までに区分1にかかる届出を行っている事業所は、上記の格上げ要件を満たさなくても、2026年5月末までは区分1の基準を満たしているとみなされます。

機能強化型以外も初日の訪問は引き上げ

機能強化型以外の事業所による「訪問看護管理療養費」についても、月の初日の訪問は以下のように引き上げられました。

機能強化型以外の訪問看護管理療養費(月の初日の訪問)

機能強化型以外の訪問看護管理療養費(月の初日の訪問)

また、算定留意事項には以下の内容が加わりましたので、確認しておきましょう。

訪問看護管理療養費の新たな留意事項(一部意訳)
災害等が発生した場合でも、訪問看護の提供を中断させないこと。中断しても可能な限り短期間で復旧させ、利用者への訪問看護の提供を継続的に実施できるよう業務継続計画(BCP)を策定し、必要な措置を講じていること。

介護保険では業務継続にかかる取り組みは、2024年度から完全義務化されています。医療保険でもBCP策定や研修・訓練の実施が問われたことになります。

2日目以降の訪問は? 適正化の細かい基準に注意

一方、2日目以降の訪問は、報酬上の評価がニーズへの対応に見合っているかが精査された上で「適正化」が図られました。

単価は2区分に再編され、区分ロ(訪問看護管理療養費2)については引き下げとなりました。

訪問看護管理療養費[月の2日目以降の訪問(1日につき)]

訪問看護管理療養費[月の2日目以降の訪問(1日につき)]

訪問看護管理療養費1の基準は以下の通りです。

【訪問看護管理療養費1の基準】⇒以下の(1)、(2)にともに該当していること
(1)同一建物居住者(※1)が7割未満
(2)以下のAまたはBのいずれかに該当すること
A. 特掲診療料の施設基準等別表の7、8(※2)に該当する者への訪問看護について相当な実績を有すること
B. 精神科訪問看護基本療養費を算定する利用者のうち、GAF尺度(※3)による判定が40以下の利用者の数が月に5人以上

※1 同一建物居住者…対象となる利用者と同一の建物に居住する他の者に対して、同一日に指定訪問看護を行う場合
※2 特掲診療料の施設基準等別表の7、8は以下のリンクを参照
▼厚生労働省「特掲診療料の施設基準等」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9733&dataType=0
※3 GAF尺度…以下のリンク先を参照
▼厚生労働省「GAF(機能の全体的評定)尺度」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/11/dl/s1111-2a.pdf

上記の(1)に該当しない、あるいは(2)のA・Bいずれにも該当しない場合は、訪問看護管理療養費2の算定となります。なお、2024年3月末時点で指定を受けている事業所では、2024年9月末までは、上記の要件を満たしていなくても訪問看護管理療養費1の算定が可能です。

「緊急訪問看護加算」も適正化により減算

サービス提供実態によって「適正化」が図られた評価には「緊急訪問看護加算」もあります。同加算は(1)利用者・家族の求めに応じ、(2)主治医の指示にもとづき、(3)緊急の訪問看護を行った場合に算定されるものです。

ただし、訪問が頻回となった場合、それが「緊急訪問として適切か」が問われました。そこで、日数に応じて「月15日以降」の緊急訪問看護に減算が適用されます。

緊急訪問看護加算

緊急訪問看護加算

算定要件も新たな規定が加わりました。それは、記録の明確化と算定理由の記載です。

緊急訪問看護加算の新基準(意訳)
● 緊急に指定訪問看護を実施した場合は、その日時、内容及び対応状況を訪問看護記録書に記録すること
● 緊急訪問看護加算を算定する場合には、同加算を算定する「理由」を、訪問看護療養費明細書に記載すること

医療ニーズが高い利用者の退院支援

ニーズへの即応性に関し、さらに注目したいのが次の2つです。
(1)医療ニーズの高い利用者の退院支援
(2)母子への適切な訪問看護の推進

医療ニーズの高い利用者の退院支援

具体策は、「退院支援指導加算」の要件見直しです。同加算は、利用者の退院にあたり、訪問看護師が退院日に「在宅での療養上必要な指導」を行った場合に算定されます。

変更点は「長時間の訪問を要する者への指導」に関する要件です。改定前は、「1回の退院支援指導が90分超」のみ算定できましたが、ここに「複数回の退院支援指導の合計が90分超」も算定可能となりました。この見直しは、利用者の状態によって長時間指導が難しい(頻回訪問による指導が望ましい)ケースがあるという実態に沿ったものです。

母子への適切な訪問看護の推進

母子への適切な訪問看護の推進には乳幼児の状態に応じた対応への評価と、ハイリスク妊産婦に対する支援の充実が示されています。

前者は、訪問看護基本療養費の「乳幼児加算」の見直しです。同加算は、6歳未満の乳幼児に訪問看護を行った場合に算定されますが、ここに対象者が超重症児や準超重症児などの場合の単価を引き上げた評価が新設されました。

一方で、従来区分については単価を引き下げ、訪問看護での対応ケースの重点化も図られています。

乳幼児加算の見直し

乳幼児加算の見直し

※(2)の別表第七、(3)の別表第八に関しては以下を参照
▼厚生労働省「特掲診療料の施設基準等」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9733&dataType=0

後者の具体策は「ハイリスク妊産婦連携指導料」の要件追加です。同加算は、精神疾患を合併したハイリスク妊産婦への支援に向け、診療方針にかかる多職種カンファレンスを2ヵ月に1回開催した場合に算定されます。適用されるのは産科・産婦人科医院ですが、この多職種連携の対象に、患者を担当する訪問看護ステーションの看護師、保健師、助産師が加わりました。

利用者の尊厳保持にかかる2つの基準見直し

最後に、「利用者の尊厳保持」という観点からの訪問看護の運営基準上での見直しに注目します。

具体的には、(1)虐待防止措置、(2)身体的拘束の適正化の推進が定められました。(1)は、訪問看護の運営規程の中に「虐待の防止のための措置に関する事項」を盛り込むことが義務づけられ、(2)については具体的取扱い方針に以下の2つが盛り込まれました。

指定訪問看護の具体的取扱い方針の第15条より(要約)
● 指定訪問看護の提供に当たっては、利用者または他の利用者等の生命・身体を保護するため「緊急やむを得ない場合」を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(以下「身体的拘束等」)を行ってはならない
● 前号の身体的拘束等を行う場合には、その態様および時間、その際の利用者の心身の状況、「緊急やむを得ない理由」を記録しなければならない

上記の「緊急やむを得ない場合」とは、切迫性、非代替性(他に方法がないこと)、一時性の3つの要件を満たすことです。また、その要件の確認については、組織としての手続きを慎重に行う必要があります。個人の判断に任せてはいけないということに注意しましょう。

次回は、介護報酬上の改定点について取り上げます。
>>次回記事はこちら
2024年度介護報酬改定 ポイント解説/医療・介護の整合性確保

※本記事は、2024年4月9日時点の情報をもとに記載しています。

執筆:田中 元
介護福祉ジャーナリスト
 
編集:株式会社照林社

【参考】
○厚生労働省(2024).「令和6年度診療報酬改定の概要 医療DXの推進」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001219984.pdf
2024/4/9閲覧
○厚生労働省(2024).「令和6年度診療報酬改定の概要 在宅(在宅医療、訪問看護)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001226864.pdf
2024/4/9閲覧

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